「視覚効果」考察 #1
0. まえがきともくじ
この間ブログのお題を募集したところ「FS(コンボ)のテンポ・リズムに関する理論的な説明・表記法について」「所謂『センスのある構成・流れ』を論理的に解説」というお題をいただきました。これらはかなり考察が難しい部分であり、とりあえずこれらに関連する前提的な考察を書いていたのですが、見返すと案の定分量が多いため、別の記事として投稿することにしました。くっ、また読みづらい記事を作ってしまった…。
そもそもFSや技の多様性の根本は、技が観覧側にどのような印象を与えるかが密接に関わっていると考えます。これを私は「視覚効果」と呼んでいます。平たく言うと見栄えです。
今回はその視覚効果が状況によってどのように変化するかについて、様々な観点から考察します。
留意しておきたい点として、以下の記述は、個人間で表れる視覚効果の差異には触れていません。あくまで一人のスピナーにとってどれほど表現の幅があるのかに注目しています。個人の差についてはまた別の記事で触れようと思います。
- 0. まえがきともくじ
- 1. 技の制御について
- 2. 偏長(ペンの偏り)について
- 3. 角度について
- 4. 手首の移動について
- 5. 切り返しについて
- 6. 指の伸ばし方について
- 7. 指同士の幅の空け方
- 8. あとがき
1. 技の制御について
技の制御について技を制御タイプ/非制御タイプの2種類に分類し、それぞれの視覚効果を考察します。
制御タイプ・・・ペンを制御することができる指の数が多い技
制御タイプは、例えばパスやソニックなどが分類されます。指で掴んでいる時間が多いため、比較的ペンの運動(回転の加減速など)を制御しやすいです。しかし同時に、指がペンの慣性的な回転を邪魔してしまう可能性があります。
視覚効果としては、指の動きが多いと同時に加減速を与えやすいため、緻密で落ち着いた印象を与えます。
非制御タイプ・・・ペンを制御することができる指の数が少ない技
非制御タイプは、例えばノーマル・ガンマン・バクアラなどが分類されます。技の途中、指で掴んでいない状態になることが多く、最初に与えた慣性を利用してペンを回すような技です。これらは制御がしづらく、ペンの回転に引っ張られて指や手がブレる可能性があります。
視覚効果としては、慣性による無意識の予測を邪魔しないため、爽快な印象を与えます。
備考
これはあくまで傾向であり、指遣いによっては制御タイプの技系統であっても爽快感を与えることができ、非制御タイプの技系統であっても落ち着いた印象を与えることができるでしょう。
(制御・非制御については、小技・大技についての記事とも関連があると思います。)
2. 偏長(ペンの偏り)について
偏長(ペンが手のひら側もしくは手の甲側にどれだけ偏っているか)について技を動的タイプ/静的タイプの2種類に分類し、それぞれの視覚効果を考察します。
動的タイプ・・・ペンの端を持って回転させるような技
動的タイプは、例えばハーフウィンドミルが当てはまります。ペンの端を持つためリーチが長くなり、技のテンポが変化する傾向にあります。ハフウィンだけではなく、持ち方によってはソニックやパスなどでも起こりえます。
視覚効果としては、回転の大きさが変化するため、ダイナミックな印象を与えます。
静的タイプ・・・ペンの真ん中を持って回転させるような技
静的タイプは、ペンの中心を回転軸にするような技です。完全に回転中心を捉えて回すことは難しいため、あくまで動的なものと比べて中心を持つ、という相対的なものになります。
視覚効果としては、変化のない回転が続くため、機械的で落ち着いた印象を与えます。
備考
この二つを混合して用いることで、テンポの変化が現れることがあります。
3. 角度について
ペンの回転面の角度について、技を動的タイプ/静的タイプの2種類に分類し、それぞれの視覚効果を考察します。また技とは別軸で関与するカメラアングルについても考察します
平面系・・・ペンの回転面の角度が変化しない技
平面系とは、例えばノーマル・パス・バクアラ・ガンマン・ハフウィンなどが挙げられます。これらの技は回転面の角度が変化しないため、ストレートな印象を与えます。
また、それぞれを比較すると回転面が異なるため、与える印象にも差が出ます。
円錐形・・・ペンの回転面の角度が変化する技
円錐形とは、例えばソニック・フィッシュテールなどが挙げられます。これらの技は回転軸が回転し、ペンが双円錐形のような動きを描きます。特殊な動きであり、変化を表現することができます。
また、先ほどの平面系の様々な回転面同士をつなぐことができます。
カメラアングル・・・技とは別軸で影響を与える
動画に映る円軌道は、技同士での回転面の角度の違いによって変化する他に、カメラのアングルにも影響されます。
カメラのアングルと回転面の関係によって映る円軌道が歪むことがあります。基本的には、円軌道に関しては正円(歪みの無い円)が美しいとされる傾向が多いです(例:ソニガチャはあまり好まれない)。
しかし、ある回転面での円軌道がが正円になるカメラアングルを設定したとき、それと異なる回転面での円軌道を正円にするのは少し難しいです(可能ではありますが)。また、滑らかな切り返し(後述)においては少し歪ませた円軌道を描かせることで、回転を滑らかに逆向きにすることができたり、歪んだ円が全く好まれないわけではないという例もあります。
さらに回転の歪みは、テンポにも関わりがあります。歪んだ縁を楕円と考えると、ペンが短軸を通過するときより長軸を通過する時の方がリーチは長いのですが、ペン先の速度は小さいため、特殊な視覚効果とテンポを与えます。また遠近に関して、カメラに近い側でのペン先の移動は大きく見えます。
4. 手首の移動について
画面に対する手首の移動について、その系統を並行移動/垂直移動の2種類に分類し、それぞれの視覚効果を考察します。
画面に対して並行移動・・・回転の振りの速さに影響
並行移動は、移動している最中の円軌道の視覚効果が変化します。例えば、右に移動させながら時計回りに回転を加えると、円軌道の上側は速度が大きくなり、下側は速度が小さくなります。
また技によっては、そもそも手首を固定すると円軌道の中心が移動してしまうものもあり、それに関してはその回転のブレを抑えるために手首を移動させることもできます。
画面に対して垂直移動・・・回転の大きさに影響
垂直移動は、移動した前後で回転の大きさが変化します。基本的に大きい回転(カメラに近い回転)には強調効果があります。
備考
アイソレーションは手首の並行移動を利用した特殊な例であり、ペンの回転による視覚効果の一部を手首の移動による影響で打ち消すなどで一種の共鳴のようなことが可能です。
またペンを制御しきれないことによって起きる手首のブレなども存在します。激しくブレた場合は観覧側の予想とずれが生じ、基本的にマイナスの視覚効果を与えます。
以上の移動によってペンの回転がフレームアウトする可能性もあります。
5. 切り返しについて
ペンの回転を逆方向にする切り返しについて、その系統を3種類に分類し、それぞれの視覚効果を考察します。
鋭い切り返し・・・回転の方向が瞬間的に逆になるような切り返し
鋭い切り返しの最たる例はタップ&カウンターです。素早いラダーなども含まれます。観覧側には回転している状態が維持されるという先入観があるため、基本的に観覧側に裏切りを与えます。
しかし、インパクトを減らすような状況も存在します。例えばFS中に何回も切り返しが発生した場合、脳が学習し切り返し自体に裏切りを感じなくなるときがあります。
ラダーは少し特殊であり、切り返し直後に再び切り返すという特徴から、最初の2回ほどは裏切りの連続ではあるものの、繰り返せばその分インパクトは減っていくでしょう。
柔らかい切り返し・・・回転の方向がゆるやかに逆になるような切り返し
柔らかい切り返しの最たる例はバランスカウンターです。鋭い切り返しより相対的に遅く切り返す、いわゆるタメのある切り返しをするようなものになります。これは今から切り返すことが直感的にわかりやすいためインパクトとしては控えめになりますが、浮遊感などを与えるのに適しています。
滑らかな切り返し・・・回転面の角度を変化させて回転の方向が段階を踏んで逆になっていくような切り返し
滑らかな切り返しは、定義的には回転を止める瞬間を作らずに回転を逆にするような切り返しです(例を簡単にあげることはできません)。回転を止めないため非常に勢いのあるコンボになりますが、性質上カメラアングルに対して歪んだ円軌道の技を途中に挟む必要があり、その間は円軌道による快感が失われる可能性があります。
6. 指の伸ばし方について
指の伸ばし方について、その系統を自然型/張り詰め型/反り返り型の3種類に分類し、それぞれの視覚効果を考察します。
自然指タイプ・・・自然な形で伸ばすような指
自然指タイプは、自然さ、余裕さを感じさせることができます。最も自然に見える指遣いです。しかし、癖などが原因で伸ばしてしまう指が比較的目立ちやすいという場合があります。
張り詰め指タイプ・・・ピンと伸ばすような指
張り詰め指タイプは、少し力んでいるように感じさせることができます。しっかりとペンを掴んでおり安定感があるように見えますが、自然さは減ります。
反り返り指タイプ・・・反り返るほど伸ばすような指
反り返り指タイプは、非常に力んでいるように感じさせることができます。不自然さが前面に出てしまう可能性がありますが、指がある程度逆に曲がる場合、少しトリッキーな雰囲気を作ることができます。指をそらすと同時に別の指を曲げることで、柔らかさを表現することもできます。
7. 指同士の幅の空け方
指同士の幅の空け方について、その系統を幅広指タイプ/幅狭指タイプの2種類に分類し、それぞれの視覚効果を考察します。
幅広指タイプ・・・指同士を開くような指の使い方
幅広指タイプは、開放的で綺麗な印象を与えます。しかし、この状態を維持する場合、使える技の種類が減ります。また指が力んでしまうとこの状態を維持しにくいため、一定の熟練度が必要です。
幅狭指タイプ・・・指同士を閉じて狭めるような指の使い方
幅狭指タイプは、主に複雑系の技を用いる影響によるものが大きいでしょう。緻密な印象を与えますが、指が集まってしまうことで自然さ、綺麗さが減少してしまう可能性があります。また人体の構造的に、握る方向に指を閉じてしまいがちなため、これも自然さ、綺麗さを損なう可能性があります。
備考
指の開閉状態は様々ですが、親指(または人差し指)と小指が、手の輪郭の外側を構成するため、非常に効果のウェイトが大きいと考えられます。
8. あとがき
いかがでしたか…?(ため息)
今回もここまで読んだ人いないだろうな…と思いながらあとがきを書いています。なんと虚しいことか。
いつのまにか文字数が膨れ上がっていましたが、頑張ってまとめたつもりです。次回までにもっとわかりやすい記事を書く練習をしないといけませんね。それではまた。